迷える30代を救う！ 見るべき、読むべきカルチャー12選
人生の方向性を考えがちな30代。悩んだとき、立ち止まったとき、新たな視点や気づきをもらえる映画、ドラマ、本をリコメンド！ 『エル・ジャポン』11月号より。
キャリアをどうするか、結婚を見据えた恋愛をすべきか、出産のリミットが気になるなど、人生の選択や決断を目前にしながら葛藤する30代。どう歩んでいけばいいのか迷ったとき、参考になるのはカルチャーの力。共感したり、思わぬ道を知ったり、固定観念を覆してくれたり・・・人それぞれの生き方と“私らしさ”を再発見するきっかけに！
【MOVIE】“自分は何者か”に 葛藤する映画4選
『セイント・フランシス』（2019年）
34歳で独身のブリジットは、大学を1年で中退し、レストランの給仕として働いている。親友は結婚し、今では子どもの話に夢中で会話についていけない。自分では一生懸命生きているつもりでも、周囲からの同情的な視線に傷つき、さえない日々に気持ちが沈む。そんなブリジットの転機となるのが、夏の短期のナニー（子守り）の仕事。6歳の少女フランシスと彼女の両親であるレズビアンカップルとの出会いを通して、ブリジットはひと筋の光を見いだしていく。「私なんて」と卑屈になることで視野が狭くなっていた自分に対する気づきから等身大に描かれる恋愛や生理のわずらわしさまで、30代の“あるある”と優しいメッセージに心癒やされる。
『わたしは最悪。』（2021年）
学生時代は何でも人より秀でていて、アート系の才能や文才もあるのに「これ！」という道を見いだせず、中途半端なままなユリヤ。成功した年上の恋人は“女性としての幸せ”の型にはめようとするが、納得できない。そんななか、若くて魅力的な男性と出会い、一般的には非常識だとされるわが道を突き進む。アラサーのユリヤが「自分は特別な人間」だと思う気持ちと、現実とのギャップは年齢を重ねるにつれてしんどくなっていく。恋愛でもキャリアでも、人はどの時点で自分が「何者かになれた」と思うのか？ ユリヤの20代後半から30代前半の人生模様は、あきれながらも背中を押されるようなエンパワーメントに満ちてる。
『喪う』（2024年）
病気で寝たきりになった父親を自宅で介護するために、父親と同居するレイチェル（ナターシャ・リオン）のもとに、疎遠だったケイティ（キャリー・クーン）、クリスティーナ（エリザベス・オルセン）の姉妹がやってくる。独身でゆるく生きているように見えるレイチェルに対して、しっかり者で10代の娘に手を焼くケイティは当たりがきつく、家族思いのクリスティーナはバランスを取ろうとする。しかし、次第に三姉妹の本音が浮き彫り……。親の健康不安をきっかけに、兄弟姉妹の関係性に大きな変化が生じるケースは少なくない。三者三様の生き方を選んだ3人の葛藤は、30代で考えておきたい問題のヒントが詰まっている。Netflix映画 独占配信中。
『ラブ・リセット 30日後、離婚します』（ 2023年）
どんなに大恋愛の末に結婚したとしても、日々の生活の中では愛の輝きも色あせる。トキメキがいつしかマンネリに変わるという経験は、多くの人が身に覚えがあるはず。自称知的でハンサムだがどんくさいノ・ジョンヨルと名家出身で敏腕映画プロデューサーだが大ざっぱなホン・ナラは、親の反対を押し切り結婚するも、互いのすべてが嫌になり離婚を決意する。だが、裁判所の調停で熟慮期間を経た30日後の離婚が決まった矢先に、交通事故で記憶を失う。もし、ゼロからやり直すことがきるとしたら、二人は新鮮な気持ちを取り戻せるのか。『椿の花咲く頃』のカン・ハヌルと『還魂』のチョン・ソミンが、息の合ったコミカルな演技で魅せる。
【BOOK】自立した大人の心得として読みたい4冊
『自分ひとりの部屋』ヴァージニア・ウルフ著
〈女性が小説を書こうと思うなら、お金と自分ひとりの部屋を持たねばならない〉という一文で知られるフェミニズム批評の古典。イギリスで男女平等の参政権が認められた1928年、女子学生に向けた講演がもとになっている。ウルフは物語の形をとって男女の格差と女性の自由について考えていく。小説家にかぎらず、30代は仕事や人生において自立を迫られる年代だ。指針を決めるときに参考になるだろう。（片山亜紀訳 平凡社刊 ￥1,320）
『続きと始まり』柴崎友香著
新型コロナウイルスの感染拡大によって変化してゆく人々の日常と、ふたつの大震災にまつわる記憶を描く長編小説。3人の主人公のうち2人は30代で既婚者だ。それぞれが仕事において直面する困難、結婚を決めた経緯、親子関係の葛藤など、ものすごくリアリティがある。時間のとらえ方は広がり、個人的な問題が社会の問題とつながっていることもわかる。さまざまな生き方を静かに肯定してくれるところもいい。（集英社刊 ￥１,980）
『射精責任』ガブリエル・ブレア著
30代は妊娠・出産の問題にも直面する年代だ。しかし、それは女性だけが考えるべきことではない。本書は「望まない妊娠のすべての原因は男性にある」として、28の提言を説いている。男性の生殖能力は女性の50倍もあること、女性用よりも男性用の避妊具のほうが手に入れやすいことなど、自分の体のことは自分で決めるためにも、パートナーと対等な関係を築くためにも、心にとどめておきたい知識が満載。（村井理子訳 太田出版刊 ￥2,200）
『おばちゃんたちのいるところ』松田青子著
ストレスフルな毎日を生きる30代におすすめ。歌舞伎や落語のおばけたちが登場人物にかけられた呪いを解いてくれる連作短編集だ。失恋した主人公のもとに死んだおばちゃんが訪ねてきて「わたしたち、もののけになりましょう」と誘う「みがきをかける」、日本の女性に化けたキツネの物語「クズハの一生」など、ルッキズムや女性差別をユーモアで粉砕する17編を収める。パワフルなおばちゃんも魅力的だ。（中公文庫 ￥704）
【DRAMA】人生の選択をするのは“私”！を描いた4作
『ベイビー・フィーバー』Netflix
なんとなくさえない日々を過ごす、35歳の不妊治療医ナナ。自分の妊娠可能な期間があと半年だとわかりショックを受けるなか、酔った勢いで元カレの精子を使い人工授精するという暴挙に出てしまう。ナナは未練があるが、元カレは復縁に消極的。それでも「子どもが欲しい！」という思いにとりつかれ、難題に直面しながらも突き進む姿が30代の心に刺さる。デンマーク製作の異色コメディ。Netflixシリーズ 独占配信中。
『ライフ・アンド・ベス』Disney＋
マンハッタンで暮らすワインの卸売業者のベス。40歳を目前にして、母親の死を機に6年も交際中の同じ会社のデキる男（だと思っていた）マットにプロポーズされるが、なんだかすべてが虚しくなってしまう。脳裏に浮かんでしまう10代の頃のトラウマと向き合いながら、元カレと新たな出会いとの狭間で自分探しに揺れるベスを脚本・監督・製作総指揮も務めるエイミー・シューマーが好演。ディズニープラスの「スター」で配信中。
『ラブ＆アナーキー』Netflix
既婚者で経営コンサルタントのソフィーは、年下の男性とオフィス内で他人に見られたらヤバいこと間違いなしの“危険なゲーム”を開始。年齢や性別、既婚であることに縛られない大胆不敵なソフィーの生き方は刺激的！ 一方で、モラハラ夫や毒親的な老いた父親との関係性から仕事をめぐる社会状況まで、女性が直面する多くの問題が盛り込まれたスウェーデン製作のユニークな一作。Netflixシリーズ 独占配信中。
『Fleabag フリーバッグ』Prime Video
ロンドンで暮らす30代前半の独身女性フリーバッグは、性欲が強めで振る舞いは奔放。下品で盗み癖もあり、家族とも友人ともうまく付き合えない。人生はどん底だが、誰かを傷つけてでも“欲しいもの”には貪欲なフリーバッグの迷走ぶりが痛くも共感を呼ぶ。フィービー・ウォーラー=ブリッジの才能がはじける快作だ。シーズン2ではアンドリュー・スコット演じる神父との恋愛模様に悶絶。Prime Videoで配信中。
