もうひとつのテーマである「未完」を象徴するのは、ギャラリーの吹き抜けから屋上までの空間を使って展示された新作インスタレーション《未完の足場》だ。ベースになっているのは、1970年の大阪万博で横尾が手がけた「せんい館」の建築だ。横尾はここで、建築プロセスをそのままの状態で提示することにより、「芸術の創造性は、未完であることによって示される」という自らの芸術観を表現した。
今回は、55年ぶりにこの「未完のアート」を再現すると共に、「せんい館」の看板に代えて、横尾が描いた大作《原始宇宙》(2000)の原寸大レプリカを展示した。これについて南は「横尾さんの『ぜひ』という声で選ばれた作品」であり、作風を自在に変化させてきた横尾が、伝統・具象・抽象という3つのスタイルを1つの作品の中に凝縮した、いわば「3コマ・アート」であると、作家の言葉を引用した。
「グッチ 銀座 ギャラリー」の端正な空間で、「未完」の美学を貫く横尾忠則の現在進行形に触れられる貴重な機会を、お見逃しなく。
横尾忠則 未完の自画像 - 私への旅
会期/〜8月24日(日)※予定
会場/グッチ銀座 ギャラリー
住所/東京都中央区銀座4-4-10 グッチ銀座 7階
時間/11:00〜20:00 ※最終入場 19:30
会期中無休
入場無料(予約優先制)
※屋上スペースは天候・時間によっては見られない場合もあり
公式サイト