記事に移動
岩手建築 
Hearst Owned

【岩手】建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築10

海と山の自然に恵まれた、岩手県。近代から現代建築まで、建築好きなら一度は訪れたい岩手の名建築をご紹介。

By MICHIKO INOUE

太平洋側にはリアス式海岸、内陸には奥羽山脈や北上高地などの雄大な山々が連なる岩手県は海と山、両方の自然が豊かだ。本記事で紹介する岩手県の建築は、時代も雰囲気もさまざま。日本の近代建築の父・辰野金吾による「岩手銀行赤レンガ館」、古民家をコンバージョンした安藤忠雄の「こども本の森  遠野」や「ミナ ペルホネン 盛岡」をはじめ、さらに東日本大震災で被災した陸前高田にある、内藤廣設計の「高田松原津波復興祈念公園 国営追悼・祈念施設」など。近代建築から現代建築まで、建築好きなら一度は訪れておきたいアドレスをピックアップ。

【青森】建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築15
【東京】建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築20
【大阪】建築好きが行くべき、フォトジェニックな名建築20

1

岩手銀行赤レンガ館/盛岡市

ミナ ペルホネン盛岡
kazuhiro shiraishi

東京駅を設計した辰野・葛西建築設計事務所の設計によって生まれた「岩手銀行赤レンガ館」。1911年に盛岡銀行の本店として開業、1994年に重要文化財に指定され、現在は銀行としての営業は終了し一般公開されている。

東京駅と同時期に設計が進められていたこともあり、赤煉瓦に白色の花崗岩を巡らせた外壁、ドーム状の屋根など東京駅と共通する部分がたくさんある。

レトロ建築
岩手銀行赤レンガ館

内部はロビーと営業所が吹き抜けになっていて、2階には吹き抜けを囲むように回廊がめぐらされている。この吹き抜けには増床のために床が張られていたが、一般公開にあわせ当初の吹き抜けを復活させた。同時に欄間装飾、照明、カウンターの仕切り格子などの装飾を、古写真や図面をもとに復原したという。

ADの後に記事が続きます
レトロ建築
岩手銀行赤レンガ館

東北唯一の辰野建築は、岩手を訪れたなら必ず見たい建築だ。

岩手銀行赤レンガ館

住所/岩手県盛岡市中ノ橋通1丁目2-20
公式サイト








2

大船渡市民文化会館リアスホール/大船渡市

大船渡市民文化会館・市立図書館 リアスホール 岩手建築

リアス式海岸で有名な岩手県大船渡市に建てられた「大船渡市民文化会館リアスホール」は、建築家新居千秋による設計で2008年に竣工した建築。新居は「新潟市秋葉区文化会館」など日本各地の公共建築を多く手がけている。




ADの後に記事が続きます
大船渡市民文化会館・市立図書館 リアスホール 岩手建築

この建築は1100席の客席をもつホールのほかに図書館、アトリエや茶室なども盛り込まれた複合施設で、大船渡の名所「穴通磯」やリアス式海岸の形態をデザインに取り入れたのが特徴だ。











大船渡市民文化会館・市立図書館 リアスホール 岩手建築

一度見たら忘れられない印象的なかたちだけでなく、コンペ後に市民とのワークショップを50回以上、自治体や技術者との会議は200回以上行うなど、プロセスを大切にしながら建築のプログラムとデザインが決められたことも評価されている。

また、東日本大震災では建物に大きな被害はなく、約500 人がこの建物に避難し約6カ月以上避難所としても使用された。

大船渡市民文化会館リアスホール
住所/岩手県大船渡市盛町下舘下18-1
公式サイト

ADの後に記事が続きます
3

岩手県立美術館/盛岡市

岩手県立美術館

2001年にオープンした「岩手県立美術館」は、萬鐵五郎、松本竣介、舟越保武など岩手のアーティストを中心に所蔵する美術館。設計は日本設計で、盛岡市中央公園内にある。









岩手県立美術館

建物入ってすぐのグランド・ギャラリーの空間が見どころ。公園に対し南北に曲線を描く吹き抜けの空間で、ここはあえてエレベータを使わずに大階段を上がって空間とガラス越しの公園の景色を楽しみたい。

ADの後に記事が続きます
岩手県立美術館

1階にあるガラス張りのラウンジにはジョージ・ネルソンによるココナッツチェアが並び、2階のライブラリーには岩手山を一望できるベンチなど、ゆったりと滞在できる空間も設けられている。

盛岡駅から車で10分ほどの立地。伸びやかな空間の盛岡市中央公園と合わせて訪れたい建築だ。

岩手県立美術館
住所/岩手県盛岡市本宮字松幅12-3
公式サイト

4

久慈市文化会館 アンバーホール/久慈市

アンバーホール 岩手建築

岩手県久慈市にある「久慈市文化会館(アンバーホール)」は、東京にある国立新美術館をはじめとする全国の公共建築を手がけてきた黒川紀章による設計。1999年に竣工し、約1,200席がある大ホールのほか、小ホール、展示室などで構成された久慈市の芸術文化の拠点だ。

この建物の見どころはガラス張りの円錐形のエントランスホール。円錐形のエントランスの上階にはラウンジ、さらにその上には展望スペースが設けられており、久慈市の景色を一望することができる。

ADの後に記事が続きます
アンバーホール 黒川紀章 岩手建築

訪れた人はまずこの円錐形の空間からホワイエへと足を運ぶ。エントランスを抜けると波をうつような大きな屋根の建物に入るが、大きく分けて北側に大ホール、南側に小ホールが設けられている。

大ホールのホワイエには宇津宮功の壁画「生物圏保護区」No.257があり、他にも小ホールのホワイエに世界最大の琥珀製モザイク画「琥珀色の夜明け-久慈-」などもある。






アンバーホール 黒川紀章 岩手建築

ガラス張りの空間や空中に浮かぶようなラウンジをはじめ、2006年に竣工した国立新美術館の空間と共通性も感じられる興味深い建築だ。

久慈市文化会館 アンバーホール
住所/岩手県久慈市川崎町17-1
公式サイト







ADの後に記事が続きます
5

こども本の森 遠野/遠野市

こども本の森 岩手建築
HIROYASU SASAKI

2021年に誕生した「こども本の森 遠野」は建築家の安藤忠雄が寄贈・設計した子ども向けの本の施設。大阪・中之島にある「こども本の森 中之島」に続く2館目の設計で、安藤建築には珍しい古民家のコンバージョン。






こども本の森 遠野 岩手建築

岩手県遠野市が所有する1900年に建てられた旧呉服店「三田屋」を改修。劣化が激しかったため一度解体し一部部材を再利用、外観はできるだけ竣工当時の姿に近づけている。内部には天井まで高く延びる木製の書棚があり、ブックディレクターの幅允孝が選書をした本が13分野の独自のテーマ別に並んでいる。 本は貸し出ししていないので、棚のなかに収まるように設けられた椅子や、畳敷きでちゃぶ台のある空間など、ゆっくりと読書ができる居場所がたくさん設けられている。さらに和室の地域活動室(みんなのへや)や、飲食やイベントスペースに使われるいちの蔵などのスペースもある。

ADの後に記事が続きます
こども本の森 遠野 岩手建築 

遠野の歴史や地域にまつわる本も多く置かれており、大人でも足を運んでみたい建築のひとつだ。

こども本の森 遠野
住所/岩手県遠野市中央通り1-16

公式サイト







6

ミナ ペルホネン盛岡/盛岡市

ミナ ペルホネン盛岡
kazuhiro shiraishi

歴史ある街並みが残る盛岡市紺屋町。ミナ ペルホネンの16店舗目のショップ「ミナ ペルホネン 盛岡」が2024年にオープンした。ミナ ペルホネンのショップは全国各地にあり、その土地との縁を大切にていねいに場所を選んでいるという。デザイナーの皆川 明は「姉や両親が盛岡に移り住んで以来、30年近く度々訪れています。盛岡は自然がありものづくりの文化も残っていて、食も豊か。日本が大切にしてきた原風景のようなものが残っているように感じます」と話す。

「ミナ ペルホネン 盛岡」オープン、古い町屋を改装した魅力的なショップへ

ADの後に記事が続きます
ミナ ペルホネン盛岡
kazuhiro shiraishi

建物は推定・築130年の木造で、もともとはふたつの住居で構成されていた。何年も空き家になっていたため傷んでいる部分もあったが、現地の職人と相談しながら柱や梁は当時のものを活かし、再生させている。破風板は皆川によるデザイン。

ミナ ペルホネン盛岡
kazuhiro shiraishi

この建築でまず注目したいのが、建物の中央にあるアプローチだ。正面から裏の通りへ抜けられるようになっており、新たに設けられた2本の柱にはなぐり加工が、さらに上下には銅板が施されている。床と壁の下部に上海レンガと呼ばれる黒レンガを貼り、壁は左官職人によって丁寧に仕上げられた。奥へと進むと途中に吹き抜けもあり、小屋組みが現しになっている。店内は漆喰の白壁と柱梁が端正に調和した空間だ。

店舗には洋服だけでなく、ヴィンテージの家具や、雑貨、器なども揃う。春には建物裏にカフェやマーケットがオープン予定。盛岡の衣食住を発信する拠点となりそうだ。

ミナ ペルホネン盛岡
住所/岩手県盛岡市紺屋町4-29

公式サイト

ADの後に記事が続きます
7

高田松原津波復興祈念公園 国営追悼・祈念施設/陸前高田市

岩手県 建築 高田松原津波復興祈念公園 国営追悼・祈念施設

東日本大震災で大きな被害を受けた陸前高田市にある「高田松原津波復興祈念公園」は、国、岩手県、陸前高田市が連携し、復興の象徴としてつくられた公園。公園内には野球場や津波に耐えた「奇跡の一本松」が現存し、その中心に建築家・内藤廣がプロデューサーとなり、設計をプレック研究所と内藤廣建築設計事務所が行った「国営追悼・祈念施設」がある。

陸前高田市 高田松原津波復興祈念公園 国営追悼・祈念施設 岩手建築

この建物には道の駅と津波の被害を伝える「東日本大震災津波伝承館」が併設されている。建物の中央1階には、防潮堤へと真っ直ぐに向かい、広場を望む追悼・鎮魂の場が設けられている。地面に張られた水盤は間接的に海や津波を想起させ、屋根に開けられたボイドからの自然光が水面を照らし、未来に向けた復興を感じさせる。

被災した人もそうでない人も、さらに国籍や宗派などに関係なくさまざまな人たちが追悼できる祈りの場として設計され、ランドスケープも含め一体となった計画が高く評価されている。

高田松原津波復興祈念公園 国営追悼・祈念施設
住所/岩手県陸前高田市気仙町土手影180番地
公式サイト

Page was generated in 4.2946798801422