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Photo: SATOSHI TAMURA

藤本さんに聞いた森美術館「藤本壮介展」見どころガイド

7月2日より『藤本壮介の建築:原初・未来・森』展が開催。建築ぬいぐるみも登場!? どんな展覧会なのか、藤本さんにインタビュー。

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藤本さんにとって「森」とは?

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Photo: SATOSHI TAMURA

A 包まれているけれど開かれている。森は、これからの建築の在り方を示唆していると考えています。

北海道で生まれ育ち、子どもの頃は家の裏の森でよく遊びました。森には草花や木々があり、包まれているので居心地がよく、閉じられてはいないので移動して探検もできる。未知のものがあるからずっと遊んでいられたんです。けれど東京の雑多な感じも好き。不思議だったけれど建築を学び始めて気付いたのは、自転車や植木鉢が置かれた裏道やいろいろなモノが売られている小さな商店街など、東京の街にはさまざまな要素があって閉ざされていないということ。つまり「森」的な成り立ちに近いんです。

森は多様な動植物の存在に加え、明るい場所と暗い場所、開けた場所と狭い場所、さまざまな場があり、環境が豊かです。柔らかく共存しながら調和している森の在り方が、これからの建築の理想ではないかと考えています。

<写真>「たくさんの ひとつの 森」と題した展示。仙台市で計画が進んでいる「(仮称)国際センター駅北地区複合施設」の15分の1サイズの一部を展示。設計に「バラバラであると同時に一つである、多様なものが響き合う」という考え方が盛り込まれている。

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「模型」や図面、素材を 1000以上も展示!? なぜ模型をつくるのですか?

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Photo: MARIKO YASAKA

A 模型は、手を動かして考える、建築の種です。

模型とは、どんな建物をつくるかを考える行為そのもの。手を動かして形を模索する時に現れる、建築の種です。アイデアが成長しプロジェクトが進むと、変化し枝分かれして派生する案も生じます。この思考の旅を見せたいと「思考の森」と題した展示を考え、当初準備した完成・部分模型は1400点~(写真は準備風景)。会場では300㎡超の空間に学生時代からの模型や、図面、素材などが1000点以上森のように配置されます。

ほかに動く人を模型に投影する「ゆらめきの森」という展示も。建築は建物だけでなく、人の動きをつくっていると気付いていただけるでしょう。

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「建築の会話」を 聞ける「ぬいぐるみたちの 森のざわめき」とは?

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Photo: MARIKO YASAKA

A 藤本建築の9つのぬいぐるみが、特徴などを語り合います。

建物が話し出したり、複数の建物たちが一緒におしゃべりしたらかわいいのでは、という何げない思い付きから始まった企画です。建築家が自身の建築を説明するという形ではない伝え方ができないかとディスカッションする中でこの案が生まれました。

建築用語も出てきますが、小学校中学年以上の児童がわかるくらいの内容です。登場する建築のぬいぐるみは「2025年大阪・関西万博大屋根リング」(写真左)「マルホンまきあーとテラス(石巻市複合文化施設)」(写真右)「ハンガリー音楽の家」など9つ。ぜひ聞いてみてください。

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5分の1サイズの 「大屋根リング」で 体感できることは?

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Image: © Sou Fujimoto Architects (Model of the Grand Ring, Expo 2025 Osaka, Kansai, Japan )

A いわば、人が中に入れる模型。木の香りもしそうです。

建築展のジレンマは実物を置けないということ。安藤忠雄さんが国立新美術館の展覧会で「光の教会」を原寸大で再現展示されたのは素晴らしかったです。

万博の大屋根リングは外径約675mと巨大で、今回、原寸大の柱の一部を展示しますが体感を想像するのは難しい。そこで人が入れるくらいの5分の1サイズを用意しました。リングの内外の関係性や、木組みの美しさ、木の香りを感じ取っていただけたらいいですね。

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スケッチや大屋根リング…そのほかの注目ポイントは?

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Photo: SATOSHI TAMURA

A 年表にその時代の自分の言葉が入っています。クリエイターの息吹が感じられるような年表ですね。

およそ30年くらいの自分のキャリアを、建築史家・倉方俊輔さんが年表にしてくださいました。プロジェクトや出来事を追う年表に、これまでに自分が書いたものの中から、この時代にこんなことを書いていた、発言していた、という言葉を拾って入れてくれています。見ていくと、言葉を使いながら建築を考えているということがわかるでしょう。

特定の建築を考える言葉もあれば、「森と建築」などの概念を考える言葉もある。言葉によって、模型やスケッチとは違う次元で整理し考えることができるのです。まだよくわかっていないことに対して、言葉を投げかけることで見えてくるという場合もある。あいまいな言葉が並んでいたりもします。

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展覧会の題名にある 「原初」とは?

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A 人類の原初にさかのぼって考えることが、未来の建築に必要だと感じています。

建築家は自身が生きている時代や少し先を見るだけでは薄っぺらいものしかできません。人間社会の本質的な部分、人類の原初に立ち戻って今の社会を問い直し、考えることが必要だと感じます。人間は体や感情などベースのところは変わっていないそうです。建築は古代からあるので歴史をさかのぼることで未来が考えられると思います。

見どころはこのほかにも、まだまだたくさんある! ゆっくり時間を取って見て回るのをおススメする。



『藤本壮介の建築:原初・未来・森』


会期:7月2日~11月9日
会場:森美術館 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F

公式サイト

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