2025年5月29日、マリア・グラツィア・キウリが「ディオール」のクリエイティブ ディレクターを退任することが正式に発表された。「ディオール」でのおよそ10年にもおよぶ任期を終え、先日ローマで開催された2026年クルーズ コレクション ショー後に退任。後任についてはまだ発表されていない。
マリア・グラツィア・キウリは、2025年5月27日に故郷ローマのヴィラ アルバーニ トルロニアにて、自身の体験や感情が深く反映された自伝ともいえる見事なコレクションを発表したばかり。
「ヴァレンティノ」に17年間勤務し、ピエールパオロ・ピッチョーリとともに共同クリエイティブ ディレクターとして活躍した後、2016年にラフ・シモンズの後任として「ディオール」のウィメンズ オートクチュール、プレタポルテ、アクセサリーコレクションのクリエイティブ・ディレクターに就任したマリア・グラツィア・キウリ。「ディオール」というフランスの名門クチュールメゾンで初となる女性クリエイティブ ディレクターとして、メゾンにフェミニスト的価値観を取り入れ、ブランドの新たな時代を切り拓いた。
彼女のコレクションには常にフェミニズムのメッセージが込められており、世界中の女性アーティストや職人たちと協力し、ルックやショーのセットを通じて彼女たちのレガシーやクラフトマンシップを世界中に紹介してきた。彼女のリーダーシップのもと、スコットランドやメキシコ、ギリシャ、モロッコ、インドといった世界各地の美しい風景を舞台に、壮大なランウェイショーを開催してきた。
クリエイションにおいては、着心地の良さと実用性を重視し、ムッシュ クリスチャン・ディオールのコードやシグネチャーを現代女性に向けて再解釈した。2024年9月のショープレビューで、マリア・グラツィア・キウリはUK版ELLEにこう語っていた。「ムッシュ ディオールは、女性が活動的に身体を動かすことのない時代に合わせて洋服をデザインしました。私が目指すのは、現代の女性が簡単に着られる作品を作ること。テクノロジーとクチュールの技術を融合させたデザインです」
また、舞台裏ではジェンダー平等を推進するための活動にも力を入れ、国連のUNESCOと連携したメンタリングプログラム「Women@Dior」を立ち上げるなどして、その成果を実現してきた。
クリスチャン ディオール クチュール会長兼CEOのデルフィーヌ・アルノー氏はこう語った。「マリア・グラツィア・キウリは、クリエイティブ ディレクターに着任して以来、フェミニストとしての視点と卓越した創造性、そしてムッシュ ディオールの精神に裏打ちされた素晴らしい仕事を成し遂げ、それによって非常に魅力的なコレクションを創り出すことに成功しました。彼女は『ディオール』の歴史に重要な一章を刻むと同時に、メゾンの目覚ましい成長に大きく貢献し、ウィメンズ コレクションを率いた最初の女性となりました」
また、マリア・グラツィア・キウリも次のように述べた 。「9年の月日を経て、私は『ディオール』を去りますが、このような素晴らしい機会を与えられたことをうれしく思っています。私を信頼してくださったアルノー氏と、支えてくれたデルフィーヌに感謝します。特に、私のチームとアトリエが成し遂げてくれた仕事に感謝しています。彼女たちの才能と専門知識のおかげで、世代をまたぐ女性アーティストたちとの親密な対話のなかで、女性のファッションにコミットするという私のビジョンを実現することができました。私たちは共に印象的な章を書き上げ、それを私は大変誇りに思っています」