保護犬・保護猫の活動を通じてお互いSNSでは繋がっていたものの、実際に会って話すのは初めてという松島花さんと二階堂ふみさん。活動をはじめたきっかけや続けることで見えてきたものなど、同じゴールを目指すふたりの未来像とは?
二階堂ふみ(以下ふみ): 松島さんとは今日が初対面なんですよね。でも撮影させていただいて、やっぱりさすがだなと思いました。私の癖でつい寄っちゃうんですけど、そういう時でも服がちゃんと見えるようなポージングをしてくださったので。プロフェッショナルな方です。
松島花(以下 花): 私も初対面だし、二階堂さんに撮ってもらうのはどんな感じだろうって緊張してたんです。だけどびっくりしました、撮影が始まったらスッと入ることができて。
ふみ: 本当ですか?
花: うん、すごくよかったです(笑)
ふみ: うれしいです(笑)。松島さんはご自身のオフィシャルインスタグラム(@hana_matsushima_official)とは別に、動物愛護専用のアカウント、松島花アニマル(@hana_matsushima_animal)で情報を発信されています。動物愛護の問題にはとてもセンシティブなところがあると思いますが、どうして発信を始めようと思ったんですか?
花:この活動を始めたきっかけは本当に母の存在が大きくて、母は私が小さい頃から地域猫の世話をしていたんです。お腹が空いていそうな子にご飯をあげたり、怪我をした子がいると病院に連れていってあげたり、冬だったらベランダに段ボールやゲージを置いて、避難できる場所を作ってあげたりとか。ご飯をあげるだけじゃいけないということで、不妊手術をして元の場所に戻すTNR(※1)というボランティア活動もしていたんですね。
そんな母に育てられてきて、自然と過酷な環境で生きる猫ちゃんたちに気持ちが向くようになり、高校生のときに最初の行動を起こしました。その頃にはもうお仕事を始めていたので、よく行く動物病院に置いてあった殺処分ゼロを目標に掲げるチラシを、撮影スタジオに貼ってもらって。
その後、仕事が忙しくなって活動から離れてしまうんですけど、2018年に20年間ずっと飼ってきた猫の梅ちゃんが亡くなってしまい、いわゆるペットロスみたいな状態に陥ってしまったとき、気がつくとSNSで猫や犬の動画や画像を見て癒されてる自分がいたんです。でも高校生の時と同様、インスタグラムの中には里親募集の期限が迫っている保護猫や保護犬がわんさかいて、やっぱり猫や犬が好きなら目を逸らしちゃいけない、自分にできることを何かやらないといけないな、と。そう思って2018年4月に松島花アニマルのアカウントを立ち上げて、発信を始めるようになりました。ごめんなさい、ひとりでずっとしゃべっちゃった(笑)。
ふみ: いえいえ(笑)。松島さんの発信をきっかけにして、保護猫や保護犬に関する現状を改めて知ったという人はきっと多いと思います。私も松島さんが投稿されていたボランティアの方と直接連絡を取らせていただくようになったんです。
花:そうなんですか? ただ動物愛護センターや保健所にいる保護猫や保護犬の情報を投稿し始めて、最初にぶつかった壁って、暗い檻に入れられた悲しい目の猫や犬の写真をどんどんリポストしていったとき、悲しくて見ていられないというフォロワーの方が多かったんです。だから考えて、この活動に対する自分の思いとか、里親が決まった子たちの報告とか、その後こんなふうに幸せに暮らしていますという状況などを織り交ぜて投稿していくことで、フォロワーの方たちが自分たちの拡散によって決まったという実感をもって、応援して見てくれるようになって。
私のやっていることは、あくまでボランティアの方たちの日々の活動があってこそだし、私はモデルの仕事をしているという拡散力を使って、そのお手伝いをさせていただいてるだけなんですけどね。たくさんの人に広げていきたい、知らない人に知ってもらいたい、と思っているので。
ふみ:2年間発信してきて、変化はありましたか?
花:うん、みなさんのコメント数も増えたし、以前よりポジティブに活動できていると思います。初めはどうしても投稿できる子、投稿できない子が出てきてしまうので、自分が命の選別をしているような気持ちになってすごく苦しかったんです。でも自分にできることをやっていくしかないと思って、最近は気持ちを切り替えてやっています。
最初の頃はモデルの片手間でこういうことをやってほしくないとか、そういう批判もありましたけど、私は生半可な気持ちではできないという覚悟で始めたし、投げ出すわけにはいかないな、と。継続していくことでみなさんにわかってもらいたいです、どれだけ本気で取り組んでいるか。
ふみ:SNSって、その世界がすべてだと錯覚させられてしまう恐ろしいものでもありますけど、一方で自分の世界がさらに広がる、ポジティブなものでもありますよね。松島さんが投稿されていて、私もリポストさせていただいた数値規制(※)に関する問題も、たぶん知らない方が多かったと思うんです。特に動物のことって、動物と暮らしている人には身近なことでも、なかなか自分の問題として考えられない人が多いですよね。
花: 動物が好き、かわいいと思う、でも動物愛護や保護というワードが出た途端、急に自分とは関係ないと思ってしまう。そういう空気感みたいなものはすごく感じます。だけど無関心でいることは怖いことですよね。
ふみ: だからこそ教育が大事なのかなって思うんです。地球は人間のものだけじゃない、人間が中心で動物はその他大勢ではないっていう考えを、子どもの頃から教えることができたらな、と。
殺処分される犬や猫がまだまだ多いのに、ペットショップに並ぶための子犬や子猫がもののようにどんどん生産される状況はおかしいなって、疑問に思える人たちが増えるといいですよね。
花: そう思います。もちろん最終目標は殺処分ゼロなんですけど、1000歩譲ったとして、せめて安楽死で死を迎えさせてほしいというか。殺処分はいまだにガス室で行われていて――。
ふみ: いわゆる「ドリームボックス」ですよね。
花: そう、ドリームボックスの中で苦しんで最期を迎えるのは本当に耐えられないので、ドリームボックスの廃止がまず1歩目。そして全国の犬や猫の殺処分数が今も1年間で4万頭に近いという現実をより多くの人に知ってもらいたいです。
それから日々の投稿をしていると、里親になることだけがボランティアだと思っている方が多いんですね。でも保護活動をしている方のお掃除の手伝いとか、犬の散歩や猫にミルクをあげるボランティアとか、ペット用品や使わなくなったタオルを物資として寄付したり、活動をしている団体に寄付したり、いろいろなボランティアの方法があるので、ひとりひとりができることをちょこっとずつがんばっていけば、それが大きなうねりに繋がるんだと思います。できることがみんな絶対にあると思うので。
ふみ:ひとりひとりが自分は無関係じゃないと感じることが大事だと思います。例えば、スマートフォンに使われている鉱物資源(タンタル)がコンゴ民主共和国でたくさん採られていて、でもその鉱物を奪い合う過程でコンゴの女性たちが性暴力を受け、競合する勢力に恐怖心を植え付けているという現実があるそうなんです。本当に悲惨な状況ですけど、それはスマホを使っている自分たちにとって、関係のないできごとじゃないと思うんです。
ボルネオの熱帯雨林がパーム油を採取するために伐採されて、オランウータンなどの野生動物が消滅の危機に瀕してしまっているのも、食品や化粧品の原料としてパーム油を使っている先進国のわれわれが本当ならいちばん知っていなきゃいけないことだと思います。なぜ日本では製品の成分表示に「ノット・アニマル・テスティッド(Not Animal Tested)」とか「クルエルティ・フリー(Cruelty Free)」とか書かないんだろうって。それが一部の意識ある人たちだけの問題になっている気がするんです。
花:そうなんですよね。動物愛護も一部の強い気持ちの人たちだけでやっているイメージですけど、別にすべて勉強して熟知する必要はなくて、自分が日常の中でできることを行なっていけばいいと思うんです。
ふみ:それぞれのペースで。
花:うん、それぞれのペースでね。
ふみ: 実はみんなができることですからね、より良くしていくことって。だから知ることが大事ですよね。
花:そう、みんなで知って、みんなで動きたいってすごく思います。
ふみ:松島さんが目指すべき未来像はどんなものですか?
花:目指すべき未来像は、松島花アニマルのアカウントをやめる日が来ること。このアカウントやこの活動がなくなることが最終的な目標です。でも問題はまだ山積みですよね。数値規制の問題もあるし、センターや保健所には地域差があるので、全国統一のシステムで運営される公設の動物シェルターができれば、動物を処分する場所ではなく、そこを生かす場所にできるのになって。今はその署名活動にも協力しています。
ふみ:私は勝手に、松島さんの目指している場所と自分の目指す場所が通じているんじゃないかと前から感じていたんです。私もこれからいろいろと行動を起こしていきたいと思っていて。
花:そうなんですね。私の活動もこれまでスマホを通したものだったので、これからは何か形にしていきたいと思っていたんです。
ふみ:一緒にやりましょう! こうやって仲間を増やしていきながら。
花:がんばりましょう。私は12歳の時からファッション業界にいて、ずっとこの業界のお友だちばかりだったんですね。でも動物愛護の活動でモデルのお仕事とは違うコミュニティを築くことができて、そこではモデルじゃない自分になれるというか、同じ活動をする一員としてみんなとやりとりできるのが幸せで。
ふみ:実は自粛期間中に保護の活動をされている方と連絡を取り合って、秋田犬の子と野犬の子の2匹をうちで保護させていただいたんです。その子たちが今、人間と一緒にいるのがどんどん楽しくなってきているのを感じていて。あとで聞いたら、その子たちがいた保健所の職員さんはすごく優しい方だったそうなんです。でも松島さんがおっしゃったみたいに、保健所やセンターの環境も場所によって大きく違いますよね。
花:私が以前行った神奈川県動物愛護センターは、それこそ動物を生かすための施設として運営されてるんです。すごく明るくて、いろいろ見ることができて。結局、人なんですよね。そこにいる方の考えで何でも変わってしまうので。今って強い気持ちがないと生きていくのが難しい時代じゃないですか。だけど強さだけじゃなく、優しさもないと幸せにはなれませんよね。だから強さと優しさと。
ふみ:とてもいい言葉ですね。強さと優しさと。
花:そのふたつをこれからも大事にしていきたいです。
Text: Yusuke Monma
(※1)TNR Trap(捕獲)、Neuter(不妊手術)、Return(元の場所に戻す)を実践する、野良猫の増加を食い止める活動のこと。
(※2)数値規制 動物愛護法が改正されて、来年6月から施行予定の数値規制のこと。動物の飼養または管理に関する基準を具体的に決めることが目的だが、ペット業界の利益主義に偏り国際的な動物福祉的な内容とは程遠いなど、議論が交わされている。
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二階堂ふみ(FUMI NIKAIDO)
1994年、沖縄県出身。映画『ガマの油』(2009年)でスクリーンデビュー。その後も日本を代表する演技派女優として、『ヒミズ』(2012年)、『悪の教典』(2013年)、『私の男』(2014年)、『リバーズ・エッジ』(2018年)、『翔んで埼玉』(2019年)など多くの作品で存在感を見せつける傍ら、写真家としても活動中。NHK連続テレビ小説『エール』ではヒロイン、音(おと)を熱演中。
Instagram(@fumi_nikaido)
松島花(HANA MATSUSHIMA)
1989年、東京都出身。11歳のときにスカウトされ、モデル活動をスタート。数々の女性誌やファッション誌でモデルとして活躍する。大手企業のCMやテレビ、イベントなどにも多数出演。近年は保護犬・保護猫活動にも力を入れ、Instagram松島花アニマル(@hana_matsushima_animal)にて情報を発信中。
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Hair & Makeup: KEIICHI HIRAMOTO (HANA MATSUSHIMA), MARIKO ADACHI (FUMI NIKAIDO), Styling: AKIKO KIZU (HANA MATSUSHIMA), Video: TSUYOSHI HASEGAWA, Photo Support: HIROSHI SHIOHARA, Model: HANA MATSUSHIMA, Art Director: MASAYA KUSHINO, Motion Graphic: HIKARI SAKURAI, Editor: SHIHO AMANO
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