舟山瑛美/「フェティコ(fetico)」デザイナー

好きになったらずっと好き。ぶれない軸をもつファッショニスタに共通するのはその一言。自分のものさしをもつあの人は、どこに共感し、どう選び、結果何を愛用しているのか? 「フェティコ(FETICO)」デザイナー、舟山瑛美さんのスタイルの根幹を「定番=ベーシック」と「特別=プレシャス」 、2つのアイテムで紐解く。


舟山瑛美/「フェティコ(fetico)」デザイナー

舟山瑛美(@emi_funayama)/「フェティコ(FETICO)」デザイナー

高校卒業後に渡英、帰国後にエスモードジャポン東京校入学、2010年卒業。コレクションブランド等でデザイナーの経験を積み、2020年に「フェティコ」を立ち上げる。以来感度の高い業界人をはじめ、熱狂的なファンを増やし続け、2023春夏コレクションではブランド初となるショーを開催した。


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舟山瑛美/「フェティコ(fetico)」デザイナー
「フェティコ」ファーストシーズンのブラウス

「フェティコ」を始動させた2019-2020年秋冬シーズンのブラウス。ジャケットを制作するようなウール混の生地で作っています。デビューシーズンなので、私が好きなものを詰めこんだようなコレクションでしたね。特にテーマは設けていなかったんですが、ブランドのコンセプトが「The Figure : Feminine(その姿、女性的)」なので、それを体現するようなものを作ろう、と意気込んでいました。ああでもない、こうでもないと、作り上げるまでに時間がかかったことも覚えています。真夏以外は毎年結構着ていますね。デザインはガーリーですが、デニムやレザーパンツを合わせることが多いです。ほとんどパンツ合わせで、甘辛く着るのが定番。

自分が作った服は将来ヴィンテージになってほしいな、と思っています。誰かが手放してもその他に欲しいと思ってくれる人がいるものを作りたいですし、それはものを買うときも一緒かもしれないです。元からそんなにものを買う方ではないかもしれないのですが、若い頃はリサイクルショップや古着屋に行っては、好きな服をよく発掘していました。ただ、体形的にも似合うものが少なかったので本当に似合うものしか買わなかったかもしれない。あとは、ずっとものを作る仕事をしているので「自分が作ったものを着たい」って思いがありましたね。やはり愛着があるので。で、自分が作れないものは買う。

ファッションにおいては誰が作っているのか分からないものは買わないですね。ときめくかも大事なんですけど、作り手が明確なもの、というのが選定基準になっているかもしれないです。値が張るものを買うときは、自分にとって「もしそれが不要になったとき、次の行き場所があるものか?」を考えます。その時に価値のあるものか、リセールバリューがあるかどうか、というところもひとつの基準。服を消耗品とまでは考えていなくて。手放しても“ごみ”にならないものを。それは作る時もそうだし、買う時も考えています。


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舟山瑛美/「フェティコ(fetico)」デザイナー
「グッチ」のホースビットローファー

「グッチ」の定番のローファーです。装飾が付いていたり、もう少しシルエットがスマートだったりと今はいろんな種類が出ていますが、どこかレトロに感じられるクラシックなものを選びました。ソールも一番ベーシックなものです。

結婚したタイミングで彼のご両親から、「記念に何か『グッチ』のものをプレゼントしたい。何がいい?」って聞かれたんです。「グッチ」と新姓の読みが掛かっていて、言わばダジャレなんですけど(笑) 彼のご家族は大切なプレゼントや記念となるタイミングで「グッチ」を購入してきたそうなんですね。義弟の奥さんも「グッチ」をもらったそうで、家系で「グッチ」が好きなんだなと。そこで、義両親から結婚記念にいただいたものがこの一足です。何にしようか悩んだんですが、自分らしくて長く使い続けられるものがいいな、という思いから、定番のローファーに。革が馴染むまではタイトだったんですが、最近はかなりフィットしてきてデイリーに履いています。ヒールだとつらいな、でもドレスアップしたいな、という時にも最適。

シンプルですが、このホースビットの金具が素敵だなと思っていて。でもなかなか手を出す機会がなくて。結婚という節目にいただいたのもありますが、自分にとってのベーシック、プレシャス、どちらも兼ね備えているアイテムです。