好きになったらずっと好き。ぶれない軸をもつファッショニスタに共通するのはその一言。自分のものさしをもつあの人は、どこに共感し、どう選び、結果何を愛用しているのか? 今回は人気セレクトショップ「アデライデ」のディレクター、長谷川左希子さんのスタイルの根幹を「定番=ベーシック」と「特別=プレシャス」 、2つのアイテムでひもとく。
長谷川左希子(Sakiko Hasegawa)/「アデライデ」ディレクター
ロンドン芸術大学LCF 卒業後、家業のザ・ウォールに入社し、「アデライデ」で販売、バイヤーの経験を積む。2018年より「アデライデ」、「アディッション」の両店舗のディレクターに就任。2021年にはブランディングコンサル会社TW/serviceを設立。Instagram:@saki_tokio
「ヴェトモン」のデニムパンツ
6本ほど持っている「ヴェトモン」のデニムパンツは、どれもデムナ・ヴァザリアがデザインしていた時代のもの。初めて「ヴェトモン」のアイテムを見たときに衝撃を受け、スエットやカットソー、ソックスブーツなども購入しましたが、デニムパンツは毎シーズン買い足すほど溺愛しています。
ジェーン・バーキンのようないわゆるクラシックなデニムスタイルに憧れがあります。でもそこにエッジィなエッセンスを加えるのが私の定番。「ヴェトモン」のアイデンティティともいえる再構築デニムは、クラシカルな装いにパンチを利かせるのにぴったり。ウィットに富んだデザインは人とかぶることも少なく、自分だけのスタイルを確立させてくれます。
買い付けに力を入れた「ヴェトモン」のデニムは多くのお客さまが手にしてくださって、私よりも本数をお持ちの顧客はたくさんいらっしゃいます。「ヴェトモン」の設立当初にデニムを買ってくださった顧客の方が、最近フリーマーケットにそのデニムを出品されているのを見て、私が買い戻したなんていう面白いエピソードも(笑)
「アデライデ」が他のセレクトショップと違うところは、私たち家族やスタッフの本当に好きなものをバイイングしていること。私自身も「アデライデ」でしか買い物をしないので、どのアイテムも自信を持ってお客さまにおすすめできます。
「ザ・ロウ」のバッグ“ソフィア”
素材と仕立ての良さ、たたずまいから、触れなくてもハイクオリティであるとわかる逸品で、私が理想とするベーシックスタイルを完結させてくれるようなハンドバッグ。このバッグがデビューしたとき、あまりの美しさに圧倒されたのを覚えています。
このバッグを持ち始めてから、新しいものを手に入れるときの指針に変化がありました。ときめきやクオリティーの高さに加え、ブランドの生産背景やデザイナーのフィロソフィーに共感を求めるようになったんです。私のスタイルに影響を与えたバッグと言っても過言ではありません。
「ザ・ロウ」と「アデライデ」の関係は、日本で一番長く続いていると思います。ブランド設立当初、ニューヨークにあるホテルの一室でオルセン姉妹に直接接客してもらったことから、お付き合いがスタート。まだ彼女たちが趣味の延長でやっていたような時代でしたが、当時20代だった私にも40代だった母にも、「このブランドでワードローブを作り上げたい」と思わせるほど圧倒的に品質が高く、デザインが洗練されていました。すごいブランドが出てきたなと感じたことをよく覚えています。
今回紹介した「ザ・ロウ」も「ヴェトモン」も、私たちが発見した当初は今ほどのネームバリューはありませんでした。これからもたくさんのものを見て、着て、すばらしい才能をもったデザイナーを開拓し、サポートしていきたいと思っています。