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AKEMI KUROSAKA
サンダル“シプレ”¥246,400/エルメス
ウィッシュリストはお買い物を計画的に進める脳内メモであり、「なりたい自分」「かなえたい願い」といった潜在的な希望の現れ。本連載では、「欲しいものはだいたい買いがち」なpepperさんが、自身のウィッシュリストで順番待ちをしている名品を、その魅力とともに紹介する。

Photo:AKEMI KUROSAKA


足元を更新したい。「エルメス」の“シプレ” 

毎年7月1日は、富士山の吉田ルートの山開きだ。夏のはじまりを告げる山開きのニュースを合図に、パンプスからサンダルに履き替える。これが20代の頃の夏の恒例行事“サンダル開き”だった。

私が社会人になった2000年代前半、オフィスではストッキングをはくことが暗黙のルールだった。ファッション誌のモデルはみんな素足にパンプスを履いていたけれど、それは別次元の世界の話だと諦めていた。テカテカした化繊のストッキングは、深いネイビースエードのパンプスもチョコレートブラウンのパテントヒールも一瞬で“OLの脚”にしてしまう破壊力があった。少しでも素肌に近い色のストッキングを求めてデパートの売り場へ行き、ライトベージュとヌードベージュとナチュラルベージュのサンプルに手を入れて何度も見比べたが、結局満足できるものには出合えなかった。

だから、堂々と素足で履けるサンダルの季節がうれしかった。まだ日差しに慣れていない白い足にはパステルカラーのネイルを。だんだん焼けていく肌にあわせてレッド、ダークブラウンと濃い色にチェンジしていくのも楽しかった。

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ここ数年はスポーツテイストのサンダルに合わせてフットネイルは爽やかなレモンイエローやペパーミントグリーンが気分。※本人私物

仕事時の服装がカジュアル化したことをきっかけに、いつの間にかストッキングをはくことはなくなった。それでもサンダルの季節がやってくると、今でも胸が高鳴る。ここ何年かは気候変動の影響もあり5月のゴールデンウィークの頃には “サンダル開き”をするようになった。これまでは数カ月間のお楽しみだったサンダルが、5月から9月末までの5カ月間、つまり1年の半分近くお世話になるメインシューズに昇格したのだ。

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コンフォートサンダルの代名詞「ビルケンシュトック」は休日用として愛用していたけど、昨年とうとう仕事の日も解禁。※本人私物

逆にブーツは暖冬によって登場回数を減らし、昨年は通算十数回しか履かなかった。これまでサンダルは季節限定のアイテムであり、素足で履くから消耗が早いという理由でパンプスやブーツよりも低めの予算を設定していたけれど、これからは1年の半分を共にするサンダルにこそ課金したい。

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ストラップに小さなスタッズを配置。足の形にフィットするラバーソールと調整可能なストラップが特徴。サンダル“シプレ”¥246,400/エルメス

そう決めた時、頭に浮かんだのは「エルメス」のサンダルだった。あるファッションエディターの方が10年履いているという“オラン”を紹介しているのを見たことがある。大切に履いてこられたのかくたびれた様子は一切なく、「エルメス」の上質な素材と高度なクラフツマンシップは長く愛用してこそ実感できるのだろうと強く印象に残った。

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40歳の誕生日に、ピカピカの中年1年生として新たな相棒が欲しいと手に入れた“ケープコッド”。二重巻きのベルトのボリューム感は大人の手元をフレッシュに見せてくれる。※本人私物のため、店舗へのお問い合わせはお控えください。

就職活動を終えた時、十の位が増える誕生日……人生の節目を迎えるたび、すこしだけ背伸びして「エルメス」のアイテムを手に入れてきた。40代になるタイミングで購入した“ケープコッド”は、5年たった今もレザーベルトを手首にくるりと巻く時のしなやかな質感に胸がときめく。まだ新品のように美しいレザーは、この先どんどんなじんで私の色に染まっていくだろう。

45歳の誕生日を迎える今年は、「エルメス」のサンダルを自分へのプレゼントにしよう。45年間文句も言わず私の体重を支えてくれた足を最高にエレガントなシューズで労ってあげたい。“シプレ”なら都会的で洗練されたデザインの中にリラックス感があって、オンオフ両方で活躍してくれるに違いない。甲のストラップでフィット感を調整できるから、どこまでも快適に歩けそうな気がする。素足で感じるラグジュアリーは、毎年やってくる長くて暑い夏をご機嫌にしてくれるはずだ。

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©Hermès

サンダル“シプレ”¥246,400/エルメス

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AYA KAWACHI

pepper/都内で働く40代の会社員で、2人の男の子の母。インスタグラムにつづる、懐かしのフレーズとユーモアを交えたファッションへの愛に魅了されるファンが多数。ジュエリー選びの虎の巻が詰まった著書『わたしのジュエリー365日』(CCCメディアハウス)も話題に。2024年7月よりELLE STYLE INSIDERとしても活躍中。


問い合わせ先/エルメスジャポン tel.03-3569-3300 https://www.hermes.com/jp/ja/