ファッションはポジティブだ! 明るく大胆に楽しむ気持ちを再び
上品で控えめ、上質を身上とした「クワイエットラグジュアリー」が流行して久しい数シーズン。声高に主張しない美しいデザインと、その裏に隠された温かいストーリーに共感し、「わかる人にはわかる」というひそやかなコミュニケーションとして楽しむのがひとつのトレンドでもあった。ただ、2025年春夏コレクションのランウェイではその反動ともいえるエネルギーがさく裂。クリエイティビティは無限に膨らみ、色使いは鮮やかに、素材は軽く、装飾も盛りだくさん。自分の「好き」を正直に、自由に表現するファッションの喜びをもう一度と言わんばかりに、各ブランドののびのびとした実験的なクリエイションがさえわたった。
混沌とした時代だからこそ、自分らしく生き抜く楽しさを模索したいのは誰だって同じ。そしてそれはきっと、常にファッションとともにあるはず。相次ぐデザイナー交代に加え、リバイバルブームが続くファッション業界。変化を楽しむ余裕をもちながら、どんなムーブメントも乗りこなすしなやかさも鍵となる。「喜び」と「楽しさ」を軸に、この春のトレンドをフォルム、トランスペアレント、カラー、インナーチャイルド、デコラティブの5つの要素でひもとく。
予期せぬフォルムが生む楽しさ
見たことのない形を描くフォルムは手仕事の妙。体を通すことでさらにサプライズを生み、思わぬ姿へと変化する形を楽しみたい。
レトロフューチャリスティックが生む、新たなバランス
フューチャリスティックなボリュームスリーブジャケットが生み出す、潔いコントラスト。未来的でもあり、レトロでもある対照的なバランスが、過去から未来へと続くファッションの新章を表すよう。
アートをモードへ。芸術をまとう喜び
想像を超えるピースをまとえば、見えてくるのはまだ見ぬ自分。アーティーなトップと特大ボリュームのスカートのコンビは誰も見たことのない完成図を描き出す。彫刻、建築、人体。あらゆるラインの美しさを称えて。
重力をもデザインする、その発想力を着る
「軽やかさ」をキーに、極限までノイズをなくしたクリエイションを追求した「ロエベ」。クラフトのタッチをファッションに落とし込み、ジャケットの裾を広げ、パンツをひねり、シューズを延伸。「常識」や「普通」を新たな視点で見つめることで見えてくる、新たなかたちを楽しみたい。
立体的に咲き誇る、春のダークローズ
その姿は優美さと繊細さ、大胆さを併せ持つ 一輪のバラのよう。綿密に組み合わされ、折り重ねられたファブリックが体の上で咲き誇る。複雑さのなかで生まれる美しさに、輝きを見いだして。
春の「透け」はヘルシーマインドが不可欠
春夏を象徴する“透け”は今季もトレンド前線に健在。あくまでヘルシーなアティチュードと心意気で、自信たっぷりに着こなして。
しなやかさを秘めた自由のアイコン
自由への物語を軽やかに謳った「シャネル」。気ままな春風に吹かれてダイナミックになびくケープには、飛翔を象徴する羽根のプリントが華やかにあしらわれて。ヘルシーな着こなしに呼応するのは、どこまでも伸びやかに、自分らしくファッションを楽しむことを肯定するメッセージ。
強さを秘めた、ニュー・フェミニニティ
常夏への憧れとともに、オープンマインドで着るかれんなレース。歩くたびにふわりと弾むシルエット、ランジェリーの要素を 盛り込んだディテール、ヘルシーに透けるロマンチックな抜け感。 どこまでも明るく軽快に、夏の夢へと導いてくれる。
重ねて生まれる、彩りのグラデーション
幾層にもなる、空気のようなオーガンジーは異なる色のニュアンスが重なることで表情豊かに。繊細な素材に刺しゅうを施した職人技が光る一着を、気負いなくデイリーに着こなしたい。
心躍るカラーマジックで個性を解放
しばらく息をひそめていた鮮やかな色使いが目立つ今シーズン。とりわけこの春は、彩度の高い色を組み合わせたカラーブロックスタイルが頻出。
豊かな色彩に込めた、自由を愛するステートメント
「喜び」という明快なコレクションテーマにふさわしいビビッドなコンビネーション。特大のボタンや、波打つスカート、胸元に咲くパンジーなど、型にはまらない大胆なスタイルにマーク・ジェイコブスらしいスピリットが光る。
心地よい「違和感」がもたらす、モダンとエレガンスの融合
スカイブルーのシャツとレッドのニットを重ねたように見えるトロンプルイユのニットは今季を象徴するカラーブロック。ミラー仕上げのスカートと合わせたスペースエイジなアプローチが印象的。
純真無垢なワードローブが今の気分
童心をくすぐるアイテムと、ファッションを楽しむ純真さが共存するトレンドとして定義されるインナーチャイルド。ガーリーやレトロとも違う新スタイル。
いくつになっても、心に秘めるは幼い頃の私
子ども時代に思いを馳せた今シーズンの「ミュウミュウ」。プチレースで縁取られた白のコットンレースのワンピースが幼少期の記憶とリンクして。
遊び心のあるシルエットが愛らしいおてんばレディ
ニットポロに合わせたのは“かぼちゃパンツ”を思わせるバルーン型のボトム。ソックスやカチューシャ風アレンジがキッズマインドをさらに後押し。
徹底的に「盛る」、装飾主義時代が再び
クワイエットラグジュアリーとは対極のデコラティブが再び戻ってきた! 全身を飾り、とことん「盛る」装飾主義がモダンなアプローチでカムバック。
どこまでもロマンチックに、着飾る喜びと再び出合う
新生「ヴァレンティノ」の本格始動によって再び動き出した、夢見心地のデコラティブ回帰。ゴージャスに連なるフリルドレスにレースのタイツ、リップにもジュエルをトッピングして、終わることのない夢の始まりを宣言。
表面からは想像もつかない、奥行きをもたせた素材を飾りに
デニムの可能性をストイックに追求し続ける「ディーゼル」。手を加えることでドレッシーにもカジュアルにもなる変幻自在な素材は、自分らしさを加えることでさらに個性が開く。ダメージデニムにきらめきを重ねて、唯一無二のスタイルを探る。
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photo:MASAMI NARUO/sept styling:AYAKA ENDO hair:YU NAGATOMO/home agency makeup:NOBUKO MAEKAWA/perle management model:SARAH FERGUSON/bravo models video:YOSHIHIRO ONO video assistant:REO YANAGIDA video editor:MARIN KANII/hearst video producer:NAOHIRO SUGANUMA/hearst