2023年の10月、ミウッチャ・プラダは「ミュウミュウ」の2024年春夏コレクションで、充実した人生を物語るような、キーチェーンやロープをあしらったバッグをたくさん発表した。
キャットウォークで通常見かける上品で清楚(せいそ)なバッグとは裏腹に、中身が雑多に飛び出したこれらのバッグは、多くの女性たちに既視感や親近感を抱かせるようにスタイリングされていた――つまり、私たちが日常的に使っているものをリアルに再現したようなバッグだった。
ミウッチャがこのコレクションを通じて伝えたかったのは、「完璧じゃなくていい。人生もファッションも、肩の力を抜いていこう」というメッセージだった。
それから約1年が経過し、チャームで飾り立てたハンドバッグは、日常生活の副産物ではなく、より意図的なデザインのディテールへと昇華した。
そしていま、多くのファッションのプロやインフルエンサーが、キーチャームやキャラクターのキーホルダー、ビーズ、リボン、スカーフなどを重ね付けし、バッグを自分らしくカスタムすることに夢中になっている。駅やストリート、カフェで、個人のテイストや興味を物語る思い出の品で飾られたバッグを目にすることが増えたと感じている人もいるはずだ。
このトレンドは、エクレクティックな要素や意図的なユーモアを多く取り入れるのが成功のカギ。人生のさまざまな場面において集めてきたものを活用するので、色のコーディネートは気にしなくてもOK。
例えば、スローガンピンバッジの横にディズニーキャラクターのキーホルダーをぶら下げ、そこに「ロエベ」や「エルメス」、「ルイ・ヴィトン」、「プラダ」などのデザイナーズブランドのチャームを付けるスタイル。バッグとチャームのブランドをそろえるのも、上手な取り入れ方だ。
また、誕生日プレゼントの包装に使われていたキュートなリボンを、「コーチ」の完売続きのキーホルダーと合わせるもよし、観光地のお土産物屋で手に入れたポップなキーチェーンと、カラフルなカラビナを一緒に付けるもよし。
ハンドバッグを飾り付けることは、TikTokですでに膨大な数の投稿がある「Birkinifying(バーキン化)」トレンドを押さえることにもなる。これは、何百万円もする「エルメス」の“バーキン”を手に入れようというものではない。このバッグの名前の由来となったファッションアイコン、ジェーン・バーキンのアプローチを見習おうという動きだ。
彼女は生涯にわたって多くの流行を生み出してきたが、このトレンドにおける彼女のレガシーは、シグネチャーだった脇に抱えるバッグの持ち方ではなく、バッグをどう扱っていたか、という点にある。
ジェーンは、自分の名を冠したこのバッグを宝物のように大切に保管していたわけではない。その代わりに、このバッグを生涯使い続け、長い時間をかけて小さなチャームやステッカーを付け足し、本当の意味でのパーソナリティと自分らしさをもたらした。自分のために作られたバッグであるにもかかわらず、ジェーンは個性をさらに増幅させるために、想像力を解放してバッグに手を加えたのだ。
買ったときのままの美しい状態にキープすることはもちろんいいけれど、バッグと一緒に人生を歩んでいるようなスタイルも、非常に魅力的なもの。
このトレンドは個人の好みを反映するものだけれど、流行の最先端も追いかけたいという人は、まずはトップブランドの洗練されたハンドバッグからチョイスを。
使えば使うほど風合いが増していく“バーキン”はもちろんのこと、「ザ・ロウ」の“マルゴー”、「ミュウミュウ」の“アルカディ”や“アバンチュール”、「バレンシアガ」の“ル シティ”や“ロデオ”など、クラシックなフォルムのものに着目しよう。
長年かけて集めたお気に入りのキーホルダーやチャームのコレクションを持っていない人は、まずはデザイナーズブランドのチャームから始めるのがおすすめ。そこから、キッチュなミニぬいぐるみやおもちゃのようなキーホルダーなど、真逆のアイテムを取り入れていくと、より面白いバランスになる。
自分らしくどんどんカスタムして、飾って、盛って、楽しく思い入れのあるマイバッグを完成させてみてはいかが?
From ELLE UK