毎年カラー・オブ・ザ・イヤーを発表しているパントン(Pantone)社。2025年の流行色として選出されたのは、豊かさを宿した、暖かみのあるブラウンカラーの“モカ・ムース”! ミルキーなエスプレッソを思わせる、洗練された色合いが特徴的。
わずかに赤みがかったブラウンは、他のアースカラーとともに2025春夏ファッションウィークの至るところで目にしたカラーのひとつ。「ミュウミュウ」や「プラダ」のキャラメルブラウンのバッグから、「マックスマーラ」や「エルメス」のアッシュブラウンのウェアまで……。一体なぜ、この控えめなトーンに惹かれているのだろうか。
パントン社によれば、それは「快適さ」と「シンプルさ」に関係している。「日常の喜びを求める私たちの願望を反映した“モカ・ムース”は、思慮深いぜいたくを表現しています」と、パントン社のカラーインスティテュートのエグゼクティブディレクター、リートリス・アイスマンは語る。副社長のローリー・プレスマンは、「調和を追い求める姿勢は、人間関係や仕事、社会的なつながり、そして私たちを取り巻く自然環境など、私たちの生活のあらゆる側面で反映されています」と付け加えた。
カラー・オブ・ザ・イヤーとは?
パントン社は、カラーの普遍的な言語を提供する会社。グラフィックデザイナーからインテリアデコレーター、マーケターに至るまで、さまざまな人々が活用するカラーの記録に専念している。毎年パントン社は、ファッション、ビューティ、エンターテインメント、エコノミーのデータを集め、次の12カ月のカラートレンド予測を提示していている。これを基に多くの企業が製品開発を行っていて、中でも「モトローラ」は、“カラー・オブ・ザ・イヤー”を記念した縦折りスマホ“Razr+”のカスタムバージョンをすでに製作しているとか。
ヘイリー・ビーバーが手がけた「ロード」の“エスプレッソ”リップティントのおかげでチョコレート系のカラーが注目を集めているなか、「エルメス」、「グッチ」、「ガブリエラ ハースト」といった多くのデザイナーはすでに“モカ・ムース”を採用しているもよう。
なぜ“モカ・ムース”が選ばれた?
多くの人にとって、今年は混沌(こんとん)に満ちた厳しい一年だった。2024年の始まりは“ブラット・グリーン(Brat Green)”トレンドで勢いよくスタートしたけれど、アメリカ大統領選挙の結果の影響などにより、その刺激的な印象が徐々に不快に感じられるようになったのかもしれない。2025年に突入する今、少しの甘さや柔らかさを求めるのは自然な流れだ。
心地よい食べものを連想させる“モカ・ムース”について、アイスマンは次のように語る。「感覚を温めてくれるので『感覚的な温かさ』と呼んでいます。“モカ・ムース”のようなカラーを見ると、温かくておいしそうなチョコレートの香りが漂ってくるのを感じますよね。そしてその温かさは、視覚的にも伝わってきます」
ファッションシーンで“モカ・ムース”は、スエードやシャギー生地といった、テクスチャーとトーンを強調する素材のアクセサリーによく使用され、ボヘミアンスタイルの復活を後押ししたカラー。そして「エルメス」は“モカ・ムース”の透け感のあるシルクとレザーを重ねたスタイリングをランウェイで披露し、「マックスマーラ」はロープベルトを合わせた、リラックス感のある“モカ・ムース”のコットンスーツを発表した。人工的な“ブラット グリーン”とは異なり、優しく包んでくれるような安心感を与える“モカ・ムース”。そんなトレンドカラーを、2025春夏コレクションを参考にしてぜひ取り入れてみて。